読売新聞 のニュース

タリウム事件、逮捕の高1少女に「薬遊び」の疑い

 静岡県伊豆の国市、県立高校1年の女子生徒(16)が母親(47)を劇物タリウムで殺害しようとした疑いで逮捕されてから、7日で1週間を迎える。


 女子生徒は容疑を否認。動機や大量の劇物購入の理由など、事件の核心はなぞのままだ。


 一方、自ら様々な薬品を飲む「薬遊び」の疑いも浮上。県警は、英国の毒殺犯グレアム・ヤングや化学への傾倒が、中学のころから見られる点にも注目して解明を進める。

◆取り調べ◆

 女子生徒の取り調べには、化学知識のある女性警察官が付き添っている。県警のベテラン捜査員とともに、「女子生徒との信頼関係づくり」(県警幹部)を優先して雑談を重ねる。不安定な様子がうかがえたが、次第に落ち着いてきているという。


 雑談の中心は、小中学校時代のこと。化学や図形、数式などについて冗舌に語る。


 これまでの捜査で、母親との間に目立ったトラブルはない。「そんなことはしていない」と否認する女子生徒の心を開かせ、事件の全容に迫れるか注目される。

◆執着◆

 女子生徒の部屋は、薬品の瓶が並び、さながら小さな実験室のようだった。プラスチック容器に入ったタリウムも発見、押収されている。


 また、女子生徒は10月21日に睡眠導入剤を飲んで入院している。ブログでも、様々な薬を服用し「薬遊び」をしていた記述がある。部屋に並ぶ薬品名を自慢するかのように挙げてもいた。


 薬局でタリウムを入手した2日後のブログには「お腹が痛いです。原因は分かっています。タリウムです」と驚くべき内容もあった。「薬品を合成した」「解毒剤を作った」と薬物への執着がうかがえる。

◆波紋◆

 女子生徒が通う県立高校では、「将来は化学者に」と教諭たちが期待していただけに、受けたショックは計り知れない。女子生徒が尊敬する人に、義母らをタリウムなどで殺害したグレアム・ヤングを挙げていることなどが明らかになり、波紋は広がる。


 「事件を起こしたとは信じられず、心の整理がつかない」と悩む同校関係者や、「事件が起きる前に、(女子生徒に)手を差し伸べられなかったのか」と自責の念に駆られる生徒もいるという。同校は、カウンセラーによる在校生への心のケアにも取り組む考えだ。