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劇物実験?7月から異常あった…静岡母親毒殺未遂事件

静岡県伊豆の国市の県立高校1年の女子生徒(16)が、母親(47)に劇物タリウムを摂取させ殺人未遂容疑で逮捕された事件で、女子生徒が自宅近くの薬局でタリウムを購入する以前の7月ごろから、母親が体調を崩し始めていたことが4日、静岡県警の調べで分かった。県警は、インターネットなど別ルートからも毒劇物を入手した可能性もあるとみて、調べている。

8月中旬以降のタリウム投与容疑で逮捕された女子生徒。しかし、毒殺未遂事件はすでに7月から進行していた可能性があることが判明した。


タリウムなどの劇物は毒劇物取締法で18歳未満への販売が禁止されている。しかし、調べによると女子生徒は8月9日、自宅近くの薬局を訪問。「化学部の実験に必要」と偽って氏名、住所などを記入した上で酢酸タリウムを注文し、24日と9月14日の2度に分けて25グラムずつ計50グラム受け取ったことが確認されている。実に50人分の致死量だ。


女子生徒がインターネットで公開していた日記風サイト「ブログ」の記述は、その後の県警の捜査で事実と確認されるケースが多く、実際に8月24日付では「眩しいほどに晴れ酢酸タリウムが届きました。薬局のおじさんは『医薬用劇物』の表示に気付かず、必要な書類を通す事無く僕に其れを渡してきました」と書き留められている。


もっとも、母親が発疹(ほっしん)など体調不良を訴えたのは同月中旬。女子生徒のタリウム入手時期より1週間ほど早い。しかも、県警の調べで、母親はすでに7月ごろから皮膚などに異常が出るなど、中毒のような症状が現れ始めていたことが分かった。


そこで県警は、7月以前にインターネットなど別のルートを通じてタリウムなど毒劇物を入手した可能性があるとみて、部屋で見つかった女子生徒のパソコンの履歴を分析するとともに、同じく押収した薬品類の特定を急いでいる。


女子生徒は10月2日から入院している母親の病室を頻繁に訪れ、病状をデジタルカメラで撮影し、自分のパソコンに保存していた。県警はこのうちの一部の写真をブログに掲載しようとした可能性があるとみている。


また、女子生徒は10月20日に体調を崩し、翌21日に入院。退院した31日に、逮捕されているが、4日までの調べで、致死量に達しない睡眠導入剤の服用によるものと判明した。


治療方法までブログで指摘していたタリウムを自ら飲んで、自殺未遂を図ったともされたこの入院。進学校に通い抜群の化学知識を持つ女子生徒の心の闇を示す新事実が次々と明らかになる中、果たして目的は何だったのか…。

小動物生体実験の形跡

女子生徒の自室からは、ネコの頭部やウサギなどの切断死骸とともに、硝酸や酢酸などの薬剤が入った多数の瓶が見つかっている。気になるのはブログで、「グレアム・ヤング毒殺日記、尊敬する人の伝記、彼は14歳で人を殺した。酒石酸アンチモンカリウムで、毒殺した」(7月3日付)と記述している点。8月20日付では「ハムスターのアンチモンに対する耐性及びアンチモンの毒性に関する調査」と記載、実際に生体実験した形跡がうかがえる。


また、タリウムを購入した自宅近くの薬局で、4月にも劇物「ビス」を500グラム購入したことが分かっている。ビスは吸入すると鼻、のど、気管支を刺激して頭痛やめまいを起こし、触れた場合は皮膚を刺激して炎症を起こすとされる劇物だ。

同級生からのいじめを示唆

女子生徒が自らを「僕」と名乗っているブログで、7月に「彼らは何時も僕をからかっていました」などと同級生によるいじめをうかがわせる記述をしていたことが4日、分かった。中学時代について「僕の物はよく無くなりましたし、それらは彼らの手で見つかることの方が多かったです」などと、いじめられた体験を示唆。現在の高校生活に関しても「僕の英語の参考書は無くなったままだし、教室では孤独です」とのくだりがあった。静岡県警は、こうした経験が事件の背景になかったかどうか、慎重に確認している。

保護者を集めて対応を話し合う

母親に劇物タリウムを摂取させたとして逮捕された女子生徒(16)が通う静岡の県立高校が4日夜、女子生徒のクラスメートの保護者を集め、今後の対応などについて意見を交わした。同校によると、保護者は「自分にできることがあったのではないか」などと自責の念に駆られる生徒らの様子を報告、同校は「追い詰めないよう見守ってほしい」と要望したという。